下塗り選びで塗装の成否が左右される! 上塗りを選ぶ前に知りたい下塗りのこと

外壁塗装といえば、シリコンやフッ素等、上塗りの種類に目が行ってしまいがち。

実際に塗装の耐候年数は、上塗りの性能にかかっています。

しかし、奮発して高級な上塗りを選んでも、下塗りの選定ミスをしてしまうと、せっかくの高級塗料が性能を発揮できません。

それどころか塗装が剥がれたり、膨れたり、不具合が起こる可能性もあります。

今回は塗装工事の成否において最も重要と言っても過言ではない、下塗り塗料のお話です。

下塗り塗料とは

下塗り塗料はその種類に関わらず、シリコンやフッ素等の上塗り塗料と、外壁や屋根等の下地の間に入り、両面テープのような役割をするものです。

ですので、上塗り塗料と下地、どちらとも好相性が求められます。

当然ながら下地を変えることは難しく、上塗りを変える方が圧倒的に簡単ですので、まずは下地と相性の良い下塗りを選ぶことになります。

下塗りを選んだ後に、上塗りを選ぶという流れが、本来の流れとなります。

下塗りの種類

下塗りを種類分けする定義について、実は曖昧な部分があります。

本来の意味ではシーラーとプライマーに違いはありませんし、フィラーやサーフェイサーは下塗りではなく中塗りに分類される場合もあります。

ここでの記載内容は、「〇〇シーラー」「××フィラー」のように、製品名に付けられている場合の一般的な解釈として解説していきます。

 

プライマー

グレーのプライマー

プライマーの語源は「primary=最初の」であり、プライマーは一番最初に塗るという意味になります。

外壁塗装においては、多くの場合金属用の錆止め入り下塗り塗料を指します。

ちなみにほとんどの錆止めは、出ている錆を止めるのではなく、出ていない錆を今後も出にくくする役割です。

既に錆が出ている場合は、その部分を撤去・補修することが望ましいでしょう。

 

微弾性フィラー

フィラーは日本語に訳すと「埋めるもの、詰めもの」です。

言葉の意味の通り、ひび割れを埋めて、動きに追従できる弾性があります。

また、粘性が高いため塗膜に厚みが付くことも特徴です。

その分、浸透力はシーラーに比べて低く、下地への密着力が必要な場合には不向きです。

ちなみに、フィラーというカテゴリには塗料以外に、コテを使って塗る粘土状のセメント系フィラーも含みます。

塗装の下塗りとしてフィラーと呼ぶ際は「微弾性フィラー」という塗料タイプを指していると考えて良いでしょう。

 

シーラー

透明なシーラー。 黒に見えますが、下地の色が塗料の水分で復活しています。

シーラーの語源は「seal=密閉する、埋める、塞ぐ」です。

シーラーの定義はプライマーと共に下塗り全てを指すこともありますが、今回は狭義でのシーラーについてお話します。

下地調整材であるフィラーと異なり表面の調整機能はなく、本来の意味での下塗りの役割を果たすのがシーラーです。

新築時の無塗装の状態の下地や、劣化した外壁の場合、下地は液体を吸い込みやすい状態にあります。

ここに上塗りが吸い込まれてしまわないように、しっかりと「シール」をすることがシーラーの役割です。

 

水性・油性

シーラーには上塗り塗料と同じく、水性と油性(正しくは溶剤系)があります。

一般的に、水性より溶剤系の方が浸透力、密着力に優れますが、臭いや環境への配慮には劣ります。

また2度目以降の塗り替えの場合、前回の上塗り塗料が水性であれば、相性の問題で溶剤系の下塗り塗料は塗ることができません

もし塗ってしまうと、旧塗膜を侵し、縮れや膨れの原因となってしまいます。
(水性下塗りの上に溶剤系上塗りは問題ありませんが、やはり一部相性が悪いものもあります)

製品名に水性や油性(溶剤系)とは入らないことが多いため、カタログ等をしっかりチェックしましょう。

 

サーフェイサー

サーフェイサーの語源は「surface=表面」です。

言葉の意味をそのまま捉えると、上塗りのようですね。

サーフェイサーは、シーラーとフィラーの中間的な機能を持っています。

密着力があり、上塗りの仕上がりも綺麗になるため、良いところ取りな下塗りです。

しかし、浸透力はシーラーに劣り、下地調整力はフィラーに劣るため、悪く言えばどっちつかずとも言えます。

白のサーフェイサ―。下塗りに厚みがあり、凹凸はやや少なくなるものの、完全には消えていません。

元来、サーフェイサーに下塗り機能がありませんが、現在のサーフェイサーの多くは下塗り機能を併せ持っています。

ちなみに塗料名には、他の塗料と異なり、「〇〇サーフェイサー」と付いていることは少なく、多くは「〇〇サーフ」となっています。

難付着の下地に使用する下塗り

外壁には光触媒やフッ素、無機塗料による塗装がされているものがあります。

これらはどれも親水性が高く、汚れが付きづらいのですが、同時に塗料も密着しづらくなります。

これらは難付着と呼ばれ、対応した下塗りを使用しなければ、塗料が剥がれることに繋がります。

近年、多くの下塗りのカタログには、この難付着に対応しているか否か、記載がされています。

その記載が説明文の中に、とても小さい文字で書かれていることが多いため、見落とさないように注意が必要です。

また、記載がない場合は、難付着には非対応と考えて良いでしょう。

 

カチオン

下塗り塗料や下地調整材の機能説明に、「カチオン」と書かれていることがあります。

カチオンとは電荷的にプラスであることを指しています。

反対に、電荷的にマイナスであることを「アニオン」と言います。

外壁等の下地や旧塗膜は、アニオン形になります。

通常は塗料もアニオン形ですが、カチオン形の下塗り塗料を使うことで、アニオンとカチオンで引き合い、密着力が高まります。

また耐アルカリ性にも優れ、コンクリートやモルタル外壁への使用に向いています。

 

下塗りの色

下塗りは、その後に塗る上塗りによって、見えなくなってしまいます。

にもかかわらず白や赤、グレー等の色が付いている下塗りがあります。

反対に無色透明な下塗りというものもあります。

実は有色、無色には、それぞれ使用するメリットがあります。

有色のメリット

  • どこを塗ったか分かるので、塗り残しが起こりづらい。
  • 下地の色を隠蔽できる=上塗りを塗った後に下地の色が透けづらい。

無色のメリット

  • 色がない=顔料が含まれない(顔料が入っていない方が、密着力や浸透力等の性能が少しだけ高い)
  • 同じ下塗りで色の有無がある場合(例えば日本ペイントの水性カチオンシーラーや関西ペイントのエコカチオンシーラー)は、無色は希釈不要で、有色は若干の希釈が必要なことがある。

まとめ

今回は下塗りについて解説しました。

下塗りと一口に言っても、種類や機能が多岐に分かれています。

その選択・見極めは難しく、業者によって見解が割れることも多々有ります。

今回のような基本的な知識を持っておくことで、業者の提案内容をスムーズに理解する手助けになれば幸いです。

 

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