同じ? 正反対? 光触媒塗料とラジカル制御塗料の意外な共通点

近年、新型コロナウィルスの影響で、光触媒という単語を目にする機会が増えました。

抗菌・抗ウィルスのコーティング剤として、CMでも流れています。

光触媒は建築業界では、トイレや塗料で、以前から使用されている技術です。

そんな光触媒ですが、実は現在流行のラジカル制御塗料と共通項があることはご存知でしょうか?

今回は、光触媒塗料とラジカル制御塗料の似て非なる部分について解説します。

光触媒とは何か?

新型コロナウィルスの対策として活躍中の光触媒。

光触媒とは光の照射により触媒作用を示す物質の総称……と言われても難しいですね。

最近よく目にする光触媒=酸化チタンだと考えて良いと思います。

この酸化チタンは光を当てると、空気中の酸素と水分から「スーパーオキサイドアニオン」や「OHラジカル」などの活性酸素を発生させます。

この活性酸素を、慣習的に「ラジカル」と呼んでいます。

ラジカルは有機物を分解する効果があります。

有機物の中にはウィルスや菌もありますし、カビなどの汚れも入ります。

光触媒塗料とは

光触媒塗料は、光触媒の機能を持つ塗料のことです。

外壁に光触媒塗料を塗ることで、壁に付着する藻・苔・カビなどの汚れを分解するため、綺麗を長くキープします。

ただし、日光の当たりづらい軒下等は、光触媒効果が出にくくなっています。

ほとんどの塗料が光触媒塗料?

現在よく目にする光触媒とは、酸化チタンのことを指します。

そして酸化チタンは、外壁用の塗料に、白色の顔料として使用されています。

屋根用塗料の濃色等には白色顔料が含まれないことも多いですが、外壁用塗料の多くは白色の顔料を含みます

ということは、ほとんどの塗料が光触媒塗料ということでしょうか?

実はほとんどの塗料が、有機物を分解する力を持っているのですが、それを塗料自身に向けてしまうのです。

つまり、汚れを分解せずに、塗料を分解してしまうということです。

全ての塗料はある意味で光触媒塗料ですが、外に向けて分解できるものだけが光触媒塗料として販売されています。

ラジカル制御塗料とは

 

ラジカル制御塗料は、名前の通りラジカルを制御する機能を持った塗料です。

通常、塗料に含まれる白色顔料(酸化チタン)はラジカルを発生させて、塗料を傷めてしまいます

ラジカル制御塗料は、ラジカルの発生を抑え、また発生してしまったラジカルも抑える技術が採用されています。

そのためラジカルによる塗料の分解が抑えられ、耐候性が良くなります

ちなみにクリヤー塗料は顔料が入っていないため、ラジカル制御型クリヤー塗料というものはありません。

フッ素と同等?

ラジカル制御が付いた塗料として最も有名なものが、日本ペイントの「パーフェクトトップ」ではないでしょうか。

パーフェクトトップはアクリル塗料になるのですが、謳い文句に「シリコングレードを超える」と記載があります。

この謳い文句から「ラジカル制御塗料=フッ素塗料と同等」と捉えてしまわれるケースを目にします。

しかし、フッ素塗料にもラジカル制御機能を付けることができますので、正しい解釈ではありません。

ラジカル制御は塗料の耐候性を上げる付加機能というのが、より正解に近いのではないでしょうか。

光触媒とラジカル制御

簡単に言うと、光触媒は分解する力を活用し、ラジカル制御は抑え込むという違いがあります。

これだけ聞くと、光触媒の方が良いように思えます。

しかし、光触媒塗料の最大手であったTOTOのハイドロテクトコートは、現在廃番となっています。

そこには屋外での施工の難しさや、不具合の多さといった要因があります。

光触媒塗料は施工が難しい

光触媒は有機物を分解しますので、一般的な外壁塗装面も分解されてしまいます。

その分解を防ぐために、無機物を挟む必要があります。

この無機物を挟む工程が屋外では難しく、施工不良が散見されました。

新築時に使用する外壁材は屋内で作られるため、現在も光触媒塗料が塗られた外壁材が各メーカーから最高グレードとして販売されています。

塗料そのものに問題があるのではなく、再塗装の難しさに問題がある塗料と言えます。

まとめ

今回は光触媒とラジカル制御の意外な共通点を解説しました。

現在の塗料業界は、ラジカル制御が主流となっています。

しかし、TOTO以外にも光触媒塗料があり、そちらも日々進化を続けているようです。

いずれ光触媒塗料が再度業界を席捲する日も来るのかもしれません。