無機塗料はシリコン塗料? 無機塗料の「無機」のお話

塗料は樹脂によってランク分けすると、以下の5つになります。

  1. アクリル塗料
  2. ウレタン塗料
  3. シリコン塗料
  4. フッ素塗料
  5. 無機塗料

現在の最高ランクは無機塗料となります。

しかしこの無機塗料、実はシリコン塗料の一種と言えるものなのです。

今回はそんなややこしい無機塗料について解説していきます。

無機塗料とは

無機塗料の「無機」とは、有機物と無機物の「無機」です。

有機物と無機物の定義については話が逸れてしまうので省きますが、塗料は全て有機物です。

ですので無機塗料という言葉は、一見矛盾している言葉となります。

なぜ「無機」という名前?

無機塗料はシリコン塗料の一種で、更には有機物です。

ではなぜ「無機」と付けられたのかというと、シリコンの構造の一部が無機物であるガラスと同じだからです。

シリコン(正確にはシリコーン)は、有機物ではあるのですが、主鎖が無機物である石英ガラスと同じシロキサン結合となっています。

シロキサン結合

シロキサン結合(Si-O)の結合力は444kJ/mol

アクリル樹脂フッ素樹脂の主鎖である炭素の単結合348kJ/molや、紫外線のエネルギー410kJ/molに比べると、非常に大きい物です。

紫外線を上回る結合力ですので、シロキサン結合だけであれば紫外線で劣化することはなくなります。

残念ながら、シリコン樹脂は主鎖であるシロキサン結合以外にも、有機物の特徴を持つ側鎖部分があるため、そこから劣化をしてしまいます。

ただ、その側鎖によって、撥水性や親水性といった有機物の特徴を持たせることができます。

シリコンは、有機物でありながら無機物の特徴を持つ、特殊な樹脂なのです。

全てのシリコン塗料は無機塗料?

無機塗料=シリコン塗料の一種というのは、ここまで解説した通りです。

そして無機塗料とは、シリコン塗料の中でも、シリコンの比率が高い=無機の比率が高い塗料のことを言います。

ではどの程度の比率から無機塗料と呼ぶのかというと……。

実は基準がありません。

シリコンが少しでも入っていれば、無機塗料と名乗っても良いのです。

市場にあるシリコン塗料は、無機塗料と名づけることも出来たわけです。

そのため、無機塗料は玉石混合。

中にはシリコン塗料のOEM製品を、無機塗料として販売しているという噂も……。

とはいえ、それは他の塗料でも言えること。

ウレタン塗料のウレタンの割合にも、フッ素塗料のフッ素の割合にも基準がありません。

微量でも入っていれば、名付けても良いことになっています。

塗料を選ぶ際には、実績や試験データ等をしっかりと確認しましょう

実はすごい? フッ素塗料

シロキサン結合の結合力は444kJ/molです。

しかし、実はフッ素樹脂のC-F結合は、489kJ/molと、シロキサン結合を上回る結合力を持っています。

ただし、フッ素樹脂の主鎖は、炭素の単結合で348kJ/molと、紫外線より弱いもの。

全体を通すと、シロキサン結合の方が耐候性に優れるということになります。

ちなみにアクリル樹脂の主鎖も炭素の単結合ですが、フッ素はC-Fに囲まれているためアクリル樹脂よりフッ素樹脂の方が耐候性が良い物になります。

まとめ

今回は無機塗料について解説しました。

無機塗料の耐候性の理由、そして市場にある粗悪品について、おまけにフッ素のお話でした。

無機塗料は2022年現在、最も耐候性のある塗料です。

しかし、それが全ての家に適合するかというと、それはまた別のお話。

塗料を選ぶ際には、耐候性だけではなく「我が家に合うか」も検討してみてください。

 

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