水を防ぐ工事と書いて防水工事。
建築業界で防水工事というと、ベランダや屋上などに施工して、建物を水の悪影響から保護する工事を指します。
防水の種類は、大別すると以下の3種類。
- アスファルト防水
- シート防水
- 塗膜防水
今回はこれらの防水工事についてのお話です。
目次
アスファルト防水
アスファルト防水は、アスファルトルーフィングと呼ばれる防水シートを貼っていく防水方法です。
シートを貼っていくという意味ではシート防水の一種ですが、今回は分けて解説します。
他の防水方法と比べて、耐久性に優れますが、工事自体はやや大掛かりで費用も大きくなります。
そのためビル等の大型物件の屋上で使用することが多い防水です。
数は少ないですが、戸建てで使用されるケースもあります。
アスファルト防水を更に分けると、以下の3種類です。
- 熱アスファルト防水
- 改質アスファルト防水 トーチ工法
- 常温改質アスファルト防水
熱アスファルト防水
現場に窯を置き、その窯で融解したアスファルトを接着剤として、アスファルトルーフィングを貼り付けていく施工方法です。
防水方法の中では最も歴史が長く、信用性の高い工事方法になります。
デメリットは、現場に窯を置くため大掛かりであること、火災の危険、臭いや煙が出るため周囲への配慮が必要なことなどが挙げられます。
改質アスファルト防水 トーチ工法
改質アスファルトルーフィングをトーチバーナーで炙り、溶融アスファルトを融解しながら貼り付けていく方法です。
煙が出ず、臭いも少ないため、熱アスファルト防水に代わり主流の工法となりました。
常温改質アスファルト防水
他のアスファルト防水と違い、熱でアスファルトを溶かすのではなく、粘着層が付いたアスファルトルーフィングを貼り付けていく工法です。
火をほとんど使わないため安全面に優れ、臭いや煙も発生しません。
ただし、上記2つの工法に比べると、密着力に劣ります。
シート防水
シート防水は、防水シートを貼る合わせることで防水をする方法です。
防水シートには伸縮性があり、様々な構造に広く使用されています。
ただし、シートを貼り合わせるため、複雑な形状に向かない防水方法となります。
シート防水の工法
防水シートを貼る方法には、接着剤を使って直接貼りつける接着工法と、固定ディスクでシートを固定する機械的固定工法があります。
接着工法は直接貼り付けるため、風の影響を受けづらい反面、下地の影響は受けやすくなります。
機械式固定は下地と防水シートの間に絶縁シートが入るため、下地の影響を受けづらくなります。
また改修方法については、シートの上からシートを重ねることが可能です。
ただし、何枚でも重ねられるというわけではなく、基本は新築時の1枚と改修時の1枚、合計2枚重ねまでと考えた方が良いでしょう。
シートの種類①ゴムシート
ゴムシートは加硫ゴムで作られている伸縮性に優れたシートです。
一般的には黒色で、上から保護塗料を塗ることで、良く見かけるグレーの防水となります(外壁用の塗料程多様ではありませんが、グレー以外の色もあります)。
熱に影響を受けにくいため、地域を選ばず全国広く施工されています。
シートの種類②塩ビシート
塩ビシートは塩化ビニールで作られているシートです。
伸縮性はゴムシートに譲りますが、保護塗料を塗らずとも同等以上の耐候性があります。
また熱風で溶かしてシート同士の接着ができるなど、施工性に優れたシートです。
保護塗料を塗らずとも耐候性があると書きましたが、保護塗料も存在しています。
ただし、保護塗料の上には新たにシートを載せることができません。
塗膜防水
塗膜防水は、塗料を塗ることで防水をする方法です。
塗料を使うため、繋ぎ目のないシームレスな防水層が形成されます。
また施工箇所の形状が複雑な場合でも、施工性が良いことがメリットとして挙げられます。
改修時は、塗り重ねできることも特徴です。
ウレタンゴム系塗膜防水
ウレタン系塗膜防水(ウレタン防水)は、液状のウレタン樹脂が硬化することで、ゴムのような弾力のある防水層を形成します。
伸縮性があり、費用面も抑えられることから、実はシェア率が一番高い防水方法です。
ウレタン防水の工法には密着工法と、絶縁シートと脱気筒で湿気を逃がす通気緩衝工法があります。
下地がコンクリート等、水分を含みやすい場合には、通気緩衝工法が適しています。
アクリルゴム系塗膜防水
アクリルゴム系塗膜防水(アクリル防水)は、ウレタン防水と工法自体はほとんど同じで、液状のアクリル樹脂を塗り、防水層を形成します。
ウレタン防水との大きな違いは、アクリル防水は水性であることです。
下地が脆弱だと、溶剤は適さない場合がありますので、そういった場合にはアクリル防水の出番です。
FRP系塗膜防水
FRP防水の「FRP」とは繊維強化プラスチック「Fiber Reinforced Plastics」の頭文字を取ったものです。
この強化プラスチックの繊維で出来たマット(一般的にはガラスマットと呼びます)を敷き詰め、上からポリエステル樹脂を塗りこんで固めることで、防水層を形成します。
このガラスマットは、切り貼りが簡単にできるため、複雑な形状にも対応が可能です。
FRP防水は防水層が非常に硬いため、耐荷重性や耐摩擦性が高く、駐車場の床面等にも採用されます。
一方、その硬さが弱点となり、揺れ等の動きには弱いというデメリットもあります。
ちなみにFRPは防水以外にも、浴槽や船、プール等にも使用されています。
防水の改修は、改修前と同じ工法が基本
ここまで紹介してきた通り、防水方法は色々な種類があります。
しかし「この方法が気に入ったから、これで改修する」とはいきません。
シート防水ならシート防水、FRP防水ならFRP防水というように、新築時と同じ工法でメンテナンスすることが基本です。
そのため「どの工法が良いのか」ということは、新築時に検討する箇所になります。
もちろん新築時だからといって、どんな防水方法でも可能なわけではありません。
防水の下地や建物の構造、防水層の上を歩くか否か、そういった各種条件で適した防水方法は変わってきます。
防水工事と外壁塗装
防水工事は、外壁塗装工事と一緒に施工をすることが多い傾向にあります。
それはメンテナンス時期が被るからという意味合いや、足場がないと施工ができない場合がある、という理由があるからです。
しかし、塗装を施工する職人と防水を施工する職人は、基本的に別の職人です。
「防水と塗装、どちらも一級の資格を持っている」というような方もいるでしょうが、多くの職人はどちらかの専業です。
板金職人や足場職人が、塗装職人とは別であることと同じです。
もし塗装職人が防水の施工を行うといった場合には「保護塗料(トップコート)を塗るだけ」というケースが考えられます。
保護塗料(トップコート)はあくまで保護が目的ですので、耐候性を回復させることはできません。
防水層に劣化が見られないような状態であればトップコートは有効ですが、劣化が見られる場合にはトップコートをしても、あまり意味を成しません。
【防水施工】と【トップコート施工】では、金額も大きく異なります。
いくつか見積りを取得した際、業者によって防水の金額差が大きい場合は、施工内容をしっかり確認することをお勧めします。