リシン外壁の塗り替えで失敗しない方法|吸い込み・熱膨れ対策を静岡のプロが解説

リシン外壁の塗り替えは、窯業系サイディング外壁の塗り替えと同じではない

リシン吹き付け(リシンとは、砂状の骨材を樹脂に混ぜてスプレーガンで吹き付ける外壁仕上げ工法のこと)は、1970〜80年代の日本の木造住宅に広く使われてきた外壁仕上げ工法です。
主にモルタル外壁に使われることが多く、独特のザラザラした砂壁状の質感と、高い通気性・透湿性が特徴です。

しかし、リシン外壁の塗り替えは、現在主流の窯業系サイディング外壁の塗り替えにはない落とし穴がある工事です。
「塗装後に色ムラができた」「施工後数年で塗膜が膨れてきた」というトラブルの多くは、リシン特有の性質を理解していない施工が原因です。

この記事では、リシン外壁の特性・劣化のサイン・塗り替えで注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

リシン外壁の特徴と弱点

リシンが長く使われてきた理由

リシンが日本の木造住宅に広く採用された理由は、その高い「透湿性」にあります。

リシンの塗膜は、砂状の骨材が密集した多孔質構造(小さな穴が無数にある構造)になっており、壁体内部で発生した水蒸気を効率よく外部へ排出します。
木造住宅では湿気が木部の腐食やシロアリ被害に直結するため、この透湿性は建物の耐久性を守るうえで重要な役割を果たしてきました。


リシン外壁の弱点

一方で、リシン塗膜には以下の弱点があります。

・膜厚が薄い
柔軟性・引張強度が低く、下地の動きに追従できずひび割れが起きやすい

・汚れが溜まりやすい
ザラザラした表面の凹凸に土埃・排気ガスが入り込み、カビ・コケが繁殖しやすい

・防水性が低い
多孔質構造のため、劣化が進むと雨水の浸入を防ぐ力が弱まる


リシンの種類による違い

リシンには主に3種類あり、塗り替え時の対応が変わります。

リシン外壁の劣化サイン

リシン外壁の劣化は3つの段階を経て進行します。

・初期段階
手で触ると白い粉がつく「チョーキング」が発生する。同時に表面の凹凸部分でカビ・コケが繁殖し始める。この段階での塗り替えが最も適切です。

・中期段階
骨材を保持する樹脂成分が失われ、ザラザラした砂壁状の骨材がポロポロと剥落し始める。この状態になると下地補修の範囲が広がります。

・末期段階
表面のひび割れが下地モルタル深部まで到達する「構造クラック」へと発展する。雨水が建物内部に浸入し、木造軸組の腐食・雨漏りに直結します。この段階では大規模な補修が必要になります。

太さ0.2mmのヘアクラック

 

リシン外壁の塗り替えで起きる2大トラブルと対策

トラブル①|吸い込みによる色ムラ・早期剥離

リシン外壁の最大の特徴である多孔質構造は、塗り替え時に「塗料の過剰な吸い込み」という問題を引き起こします。

劣化したリシン面に適切な下地処理をしないと、塗料の液状成分が毛細管現象(細い管状の隙間を液体が吸い上げる現象)によって急速に吸い込まれます。
その結果、表面には新しい塗膜に必要な樹脂が不足します。

これが「色ムラ・艶ムラ」として現れ、さらに新旧塗膜の密着力が著しく低下するため、施工後数年以内に塗膜がシート状に剥がれる「早期剥離」を引き起こします。

対策:浸透シーラーをしっかり塗り込む

この問題を防ぐために最も重要なのが、浸透型シーラーをしっかりと塗り込むことです。

シーラーが劣化したリシン層の深部まで浸透することで、古い塗膜と骨材を一体化させつつ、上塗りの吸い込みを抑制します。
この工程が不十分なまま次の工程に進むと、いくら良い上塗塗料を使っても外壁に吸われてしまい、色ムラや早期剥離につながります。

またフィラーやサフェーサー等の肉厚な下塗材を、浸透シーラーの後に塗ると、より上塗り塗料がしっかりと表面に乗りやすくなります。
※ほとんど劣化をしていない場合、浸透シーラーを省ける場合もあります。

一方、肉厚であるがゆえにリシンのザラザラした質感がやや失われることとなります。
使用する上塗りや、塗装後の質感をどうしたいかによって、選択が分かれます。

 


トラブル②|ひび割れ補修跡が目立つ

リシン外壁のひび割れ補修でよくある悩みが、補修跡が目立つことです。

従来、多くの業者で採用されている補修方法は、外壁をUカットやVカット(ひび割れを溝状に削り広げる方法)してシーリング材を充填する工法でした。

Uカット作業中

この方法では補修跡がミミズ腫れのように盛り上がってしまいます。更にそのミミズ腫れにはリシンのザラザラ質感がないため、遠目からでも目立ちやすく、仕上がりの美観を損ないます。

エポキシ樹脂注入工法

ハウスメンテ静岡では、ひび割れ補修にエポキシ樹脂注入工法を採用しています。弾性エポキシ樹脂をひび割れの内部に注入することで、内側から充填・補強する工法です。

エポキシ樹脂注入

UカットやVカットのように外壁を削らないため、外観を変えずに耐久性がより高いため、リシンを含めモルタル外壁のひび割れ補修に適した工法です。

 


トラブル③|弾性リシン特有の「熱膨れ」

弾性リシン外壁を塗り替える際に特有のトラブルが「熱膨れ(サーマルブリスター)」です。

弾性リシンの塗膜には、軽量化・断熱性のために多孔質の超軽量骨材が含まれており、この骨材が水分を溜め込みやすい性質を持っています。
この状態で透湿性の低い一般的な塗料を上塗りして表面を密封すると、夏場などに強い日差しを浴びたとき、骨材内に溜まった水分が一気に気化して体積が膨張します。
同時に弾性塗料が熱で軟化するため、内部の水蒸気が新塗膜をドーム状に押し上げ、「熱膨れ」が発生します。

対策:透湿性サーフェーサー+専用塗料の組み合わせ

熱膨れを防ぐには、特殊架橋型サーフェーサー(施工後に硬質な塗膜を形成しながら高い透湿性を持つ下塗り材)で弾性リシン層の変形を抑えつつ、内部の水蒸気を外へ逃がします。
上塗りには高透湿性塗料を組み合わせることで、熱膨れを防ぐことができます。

 

よくある質問

Q. リシンの風合いを変えずに塗り替えることはできますか?
A. 可能です。シーラーをしっかり塗り込んだうえで、艶消し・高透湿性の塗料を使用することで、リシン本来のマットな砂壁状の質感を保ちながら塗り替えができます。

Q. 膨れが発生している場合、塗り直しで解決できますか?
A. 膨れの内部に水が溜まっている場合は漏水原因の根本解決が先決です。
内部が空気のみの場合は、適切な下地処理と透湿性塗料への変更で対応できます。まずは診断でご確認ください。

Q. ひび割れが多い場合、全面的に補修が必要ですか?
A. ひび割れの深さと範囲によって対応が異なります。
表層のみのヘアクラックであれば、エポキシ樹脂注入で対応できるケースがほとんどです。
下地モルタル深部まで達している構造クラックの場合は、より大規模な補修が必要になることがあります。まずは診断でご確認ください。

 

まとめ

・リシン外壁は高い透湿性が強みだが、膜厚が薄く防水性・柔軟性が低い

・劣化サインは「チョーキング→骨材の剥落→構造クラック」の順に進行する

・吸い込み対策の基本は浸透シーラーをしっかり塗り込むこと

・ひび割れ補修はエポキシ樹脂注入工法が補修跡が目立たず適している

・弾性リシンの熱膨れ対策は特殊サーフェーサー+高透湿性塗料の組み合わせ

 


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